ツンデレかぐやちゃん(竹取物語)

竹取物語を現代風に訳してみました

部下はサボるし、大納言は浮かれる

 さて「竜の首の珠を取ってくるまで帰ってくるな」と言われた部下達、とりあえず、その命令に従おうと出かけようとしたところまではいいんだけど、もちろん、みんな竜の住んでいる所なんて全然分からない。それで「どっちに行ったらいいんだろう」と迷って、さんざん悩んだあげく、結局「適当に行ったら、とりあえず、なんとかなるんじゃない」という話に落ち着いたんだってさ。


 でもね、そうやって、モタモタしているうちに、
「全く、俺達の事なんか、これっぽっちも考えずに、女にのぼせあがってよ~」
なんて、悪口を言い出す者が出てくる始末。そして、竜退治のために用意されたお金や食べ物、服などをみんなで分け合って、とりあえず足の向くまま気の向くままと出ていったんだけど、そのまま、サボって家に帰って籠るやつや、ちょっと旅行気分で自分の行きたいところに行ってしまうやつまで出てきたんだって。


 それでもまだ、どうしていいか分からず、全くお手上げ状態でその場に残っていた者たちは、口々に
「親だろうが上司だろうが、こんな手がかりも何も無いような、どうしていいか分からないような事を命令されたってよ~」
と、そのまま悪口の続きをやりだして、ついつい、大伴大納言の悪口大会になってしまったんだって。


 そうとは知らない大伴大納言は、
「こんなみすぼらしい家では、かぐや姫をお迎え出来んぞ」
と、部下たちには「お祈りしている」なんて言っておきながら、その約束なんかそっちのけで、立派な屋敷を新しく建て始めたんだって。その家というのが、漆塗りの壁に綺麗な絵を描き、屋根は様々な色の糸で飾り、すべての部屋には綺麗な絵が描かれた豪華な和服を飾るという念の入れよう。さらには、自分がお世話をしていた女達とは全員と縁を切って、奥さんまでも離婚。かぐや姫が絶対自分の嫁になると確信して、その豪華な家で一人で暮らしていたんだって。

<ワンポイント解説>
 部下に対して、無理矢理「俺の言うことを聞け」と「理不尽な事を平気で言うタイプ」っていうんでしょうか。嫌がられるタイプだろうと思います。部下も簡単にサボってしまいますから、実際には人望があまりなかったんでしょうね。また、部下達も言うことを聞かず取るものだけ取ってサボったり、陰で悪口を言い合ったりしているわけですから、やはり「心の醜い人たち」として書かれていると思った方がいいでしょう。


 さらに大伴大納言は、まだ、かぐや姫と結婚できると決まった訳でもないのに、奥さんと離婚してしまうという、いわゆる捕らぬ狸の皮算用を始めてしまっている訳ですから手に負えません。

<参考用原文>
 おのおの仰せ承りてまかりぬ。「竜の首の珠取り得ずは帰り来な」とのたまへば、いづちもいづちも、足の向きたらむ方へ往なむず。
「かかる好き事をし給ふこと」
とそしりあへり。賜はせたる物、おのおの分けつつ取る。あるいはおのが家にこもり居、あるいはおのが行かまほしき所へ往ぬ。親・君と申すとも、かくつきなきことを仰せ給ふことと、ことゆかぬもの故、大納言をそしりあひたり。

かぐや姫すゑむには、例やうには見にくし」
とのたまひて、麗しき屋を造り給ひて、漆を塗り、蒔絵して壁し給ひて、屋の上には糸を染めて、いろいろふかせて、内々のしつらひには、いふべくもあらぬ綾織物に絵を書きて、間ごと張りたり。もとの妻どもは、かぐや姫を必ずあはむ設けして、独り明かし暮らし給ふ。