ツンデレかぐやちゃん(竹取物語)

竹取物語を現代風に訳してみました

大納言、自ら竜退治に出かける

 ところが、大伴大納言、連絡が来るのを昼も夜もずっと待ち続けていたんだけど、1年以上経っても、部下からは何の音沙汰も無し。それで、不安に思って、どういう状況になっているのか、こっそりと調べようと、お供は二人だけにして、自分は身分がバレないようにわざとみすぼらしい服を着て、難波の港まで行き、そこにいた船頭に
「『大伴大納言の部下という人が船に乗って出かけていって、竜を倒し、その首についている珠を持ってきた』なんていう話は聞いたことがありませぬか?」
と聞いてみると、
「は? 何じゃ、その話?」
と船頭が笑って、
「そもそも竜を退治に行くなんて言われたら、誰も船なんか出さねえよ」
と答えたんだよね。すると、大伴大納言「こいつ、いくじなしの船頭だな。俺の武勇を知らないから、そんな事を平気でいうんだろう」と思って
「おまえ、私を知らんのか? 私は大伴大納言だぞ。私の弓なら、一発で竜をしとめて、首の珠でも何でも取ってやるわい。もう、グズグズしている部下どもなんて待っていられるか。おい、船頭、船を出せ」
とすごむと、船頭が完全に恐れおののいて、それで、言われたとおりに船を出すことになってしまったんだよね。ところが、そのまま竜を探して海をあちこち探しているうちに、いつの間にか、九州の沖の方まで出てしまっていたのさ。

<ワンポイント解説>
 大伴大納言は「威勢だけはいい」っていう手合いのようで、よく「俺は昔、ヤンチャしてたんだ」という人と似ているのかも知れません。でも、実際は・・・というのがこの続きで分かります。

<参考用原文>
 遣わしし人は、夜昼待ち給ふに、年越ゆるまで音もせず。心もとながりて、いと忍びて、ただ舎人二人、召し継ぎとして、やつれ給ひて、難波の辺におはしまして、問ひ給ふことは、
「大伴の大納言殿の人や、船に乗りて竜殺して、そが首の珠取れるとや聞く」
と問はするに、船人、答へて言はく、
「怪しきことかな」
と笑ひて、
「さる業する船もなし」
と答ふるに、「をぢなきことする船人にもあるかな。え知らで、かく言ふ」とおぼして、
「我が弓の力は、竜あらばふと射殺して、首の珠は取りてむ。遅く来る奴ばらを待たじ」
とのたまひて、船に乗りて、海ごとに歩き給ふに、いと遠くて、筑紫の方の海に漕ぎ出で給ひぬ。