ツンデレかぐやちゃん(竹取物語)

竹取物語を現代風に訳してみました

かぐや姫、結婚の条件を提示

 それでも、何とかして結婚させたい爺さんは、今までのようには引かずに
「でもなあ~、愛情の深さの事ばかり考えてもしょうがないだろう。それに、そもそも、どんな気持ちの人なら、会ってくれるんだい? 私の見る限り、こんなに熱心に通ってきてくれているんだから、愛情の少ない人なんて、いないと思うよ」
と言うと、かぐや姫もちょっと痛い所を突っ込まれたので、
「あら、そんな、すっご~く深い愛情を求めているわけではないのよ。それに、年収が高くないとイヤだとか、イケメンじゃなきゃイヤとか、そんな面倒な事を言っている訳ではないの。だって、みんな同じくらいの愛情なんですもの、その中で誰がいいかっていうことが分からないだけよ・・・そうねえ、それなら、5人の中で、私が欲しいと思っているステキなプレゼントを持ってきてくれる人が一番愛情が深いって思うから、そのプレゼントを持ってきてくれた人と結婚することにするわ。それならいいでしょ? その事を、来ている5人にも伝えてくれる?」
と、その場で機転をきかして、爺さんの説得をかわそうとしたんだって。でも、それを聞いた爺さん、
「しめた、やっと結婚する気になってくれた」
と思って、
「うん、それならいいだろう」
と、かぐや姫の言うとおりの事を5人に伝えることにしたのさ。

<ワンポイント解説>
 「機嫌取るには、何より、プレゼント~」っていう話。こういう感覚は、今も昔も変わらないような気がします。鳥の中にはメスに気に入ってもらうために自分が取ってきた餌を与える、なんていうものもいますし、人間という動物の求愛行動には、このプレゼントというのが本能的に組み込まれているのかも知れませんね。ただし、ここでは、かぐや姫は「断るための心づもり」がある状態で、こういう返事をしています。


 ちなみに、これからの内容をご存じの方も多いと思いますが、結局、無理難題をふっかけて、結婚しないようにしようと、かぐや姫が企んでいるわけですよね。

<参考用原文>
 翁言はく、
「思ひの如くも、のたまふかな。そもそもいかやうなる心ざしあらむ人にか、あはむとおぼす。かばかり心ざしおろかならぬ人々にこそあめれ」
 かぐや姫の言はく、
「なにばかりの深きをか見むと言はむ。いささかのことなり。人の心ざし等しかんなり。いかでか、中に劣り勝りは知らむ。五人の中に、ゆかしきものを見せ給へらむに、御心ざし勝りたりとて、仕うまつらむと、そのおはすらむ人々に申し給へ」
と言ふ。
「よきことなり」
と受けつ。