ツンデレかぐやちゃん(竹取物語)

竹取物語を現代風に訳してみました

阿倍御主人、火鼠の皮衣をかぐや姫に見せる

 それで、皮衣をかぐや姫の所に持っていくと、爺さんが出てきて、皮衣を受け取り、かぐや姫に見せたんだって。
 かぐや姫は、その皮衣を見て
「あら~、すごく綺麗な皮衣ね~」
と割と気に入った様子。ただ、そのあと、すぐに
「でも、これだけじゃ、本物かどうか分からないわ」
と、いつもの調子で言うので、爺さんは
「まあ、とりあえず、阿倍御主人さんに入ってきて貰おうじゃないか。これほど綺麗な皮衣は他にはないし、本物だと思った方がいいだろうさ。いいかい、阿倍御主人さんをガッカリさせるような事はするんじゃないよ」
かぐや姫を諭すように言って、阿部御主人を招き入れ、かぐや姫の前に座って貰うと、側にいた婆さんも、かぐや姫の様子を見たり、皮衣を見たりして「今度ばかりは、うまくいくんじゃないかしら」と思ったみたいなんだよね。
 爺さんも、かぐや姫がいつまでも独身でいることをすごく心配していたので「なるだけ、ステキな旦那様の所に嫁がせたい」と思っていたのに、来る人来る人、かぐや姫が嫌がるので、今まで無理強いはしないようにしていたんだけど「何とか今回は上手く行ってくれ」って、心の底から願っていたんだって。

<ワンポイント解説>
 原本では皮衣を見たときの「あら~、凄く綺麗な皮衣ね~」というセリフと「でも、これだけじゃ本物かどうかは分からないわ」というセリフは、間の説明なく一続き。ただ、爺さん、婆さんが「今度こそ、うまく行きそう」と思ったのは、皮衣を気に入ったような様子を見せたためではないか、と解釈して、それが分かりやすいようにセリフを二つに分けました。また「何とか今回は上手く行ってくれ」と言う内容は原本には直接書かれてはいません。おそらく、当時の人たちは、婆さんの気持ちと爺さんの気持ちがダブっているという読み取り方をしたのではないか、と解釈して、このようにしました。

<参考用原文>
 家の門に持て至りて立てり。竹取出で来て、取り入れて、かぐや姫に見す。 かぐや姫の、皮衣を見て言はく、
「うるはしき皮なめり。わきて真の皮ならむとも知らず」
 竹取答へて言はく、
「とまれかくまれ、先づ請じ入れ奉らむ。世の中に見えぬ皮衣のさまなれば、これをと思ひ給ひね。人ないたくわびさせ奉り給ひそ」
と言ひて、呼びすゑ奉れり。
  かく呼びすゑて、「この度は必ずあはむ」と嫗の心にも思ひをり。この翁は、かぐや姫の寡なるを嘆かしければ、「よき人にあはせむ」と思ひはかれど、切に、「否」と言ふことなれば、え強ひねばことわりなり。