ツンデレかぐやちゃん(竹取物語)

竹取物語を現代風に訳してみました

庫持皇子、逆ギレ

 また、かぐや姫は、訴え出てきた職人たちを呼んで
「あなたたちのお陰で、本当に助かったわ~」
と言って、ご褒美に金銭をたくさん与えると、職人たちは、
「うわっ、こんなに貰ってもいいんですか?」
と、予想以上の報酬にビックリ。みんなすごく喜んで帰っていったんだって。
 ところが、道の途中で庫持皇子が待ちかまえていて、この職人たちが通りかかると、いきなり飛び膝蹴り。そのあと狂ったように殴る蹴るの大暴行。それで、職人たちも、せっかく貰った報酬を全部、庫持皇子に取られたというか、その場に捨ててしまったというか、もうあわてふためいて逃げていったんだって。
 ただ、皇子の方も、職人達に当たり散らしてみたところで、自分のこれからを考えると、
「こんなの一生の恥。これ以上恥ずかしいことなんて、あるもんか。嫁さんをもらえなかっただけじゃなく、世間の人から、このあと何と言われる事やら、そのことを考えると、もうこれから先、生きてみんなと顔を合わせられない」
と、茫然自失の状態で、そのまま深い山奥に入っていってしまったんだって。それで、皇子に仕えていた人たち大勢で手分けして、皇子の行方を探したんだけど、ひょっとしたら死んでしまったのか、全く見つけることができなかったんだってさ。

 それで、皇子が生きる気力を失って身を隠し、家来に何年もの間見つからなかったように、「自分を見失って、魂が抜けたようになってしまうこと」を当時の人は「たまさかる」って言ったんだけど、これ、そもそもは、蓬莱の玉の枝の「玉が(枝から)下がる」から来ているんだってさ。なんちゃって~。

<ワンポイント解説>
 庫持皇子は、わざわざ待ちかまえていて仕返しをしたようなんですが、まあ、見事な逆ギレですよね。嘘をついて「いいふりこき」をしても、結局、どこかでバレるものだ、ということです。それから、職人たちの立場からみると「告げ口をすると、恨みを買う」という話にもなるんでしょう。だから、嘘の片棒担ぎをすること自体、良いことではないよ、という話にもなろうかと思います。最終的には両成敗ですね。


 また、なんちゃって解説の「たまさかる」は漢字で書くと「魂離る」。漢字で書くと分かりやすいと思いますが「体から魂が離れていってしまう」ということで「気が抜けてボーっとしてしまう」という意味になります。元々はやはり掛詞になっていて「たまさかる」と書くと「魂離る(たまさかる)」と「玉が蓬莱の枝から下がる」の意味の「玉下がる(たまさがる)」の両方に読めることから語源になったという話にしています。


 それから、「なんちゃって解説」の中に「何年もの間見つからなかった」と書いてあるので、ひょっとしたら庫持皇子は、後になってひょっこり見つかったのかも知れませんね。

<参考用原文>
 かの愁訴せし工匠をば、かぐや姫呼びすゑて、
「うれしき人どもなり」
と言ひて、禄いと多く取らせ給ふ。工匠らいみじく喜びて、
「思ひつるやうにもあるかな」
と言ひて帰る。道にて、庫持の皇子、血の流るるまで打ぜさせ給ふ。禄得しかひもなく、みな取り捨てさせ給ひてければ、逃げ失せにけり。

 かくてこの皇子は、
「一生の恥、これに過ぐるはあらじ。女を得ずなりぬるのみにあらず、天の下の人の見思はむことの恥づかしきこと」
とのたまひて、ただ一所深き山へ入り給ひぬ。宮司、侍ふ人々、皆手を分かちて求め奉れども、御死にもやし給ひけむ、え見つけ奉らずなりぬ。皇子の、御供に隠し給はむとて、年頃見え給はざりけるなりけり。これをなむ、「たまさかる」とは言ひ始めける。