ツンデレかぐやちゃん(竹取物語)

竹取物語を現代風に訳してみました

求婚者、5人に絞られる

 さてさて、こうやってかぐや姫の家の周りをウロウロしている男達の中には、どうしてもかぐや姫を見てみたいという思いが募りすぎて、まともな人なら「そんなことまでするの?」というような、とんでもない所にまで入っていったりしたんだけど、それでも、全然見ることが出来なかったわけ。また、家の人に「伝言」を頼もうと話しかけても、完全に無視されて、全く相手にしてもらえない。それでも、家の周りを離れないで、そこで、暮らしているような感じになっちゃっている人もかなり多かったんだって。


 ただ、そうは言っても、いつまで経っても何の音沙汰も無いわけでしょ。だから、中には「俺じゃあ、ちょっと無理だろうな」と思う人も出始めて、そう言う人は、かぐや姫に会うことを諦めて「ここで、過ごしていたって、いいことなんか何にも無いや」と、帰ってしまたのさ。


 そうやって、しばらく経って、少しずつ人が減っていって、それでもまだ、最後まで「かぐや姫の事を諦めきれない」と残ったのが5人。昼も夜もずっと家の周りに来ては「かぐやちゃ~ん、愛してるよ~」なんて言い続けていたんだって。

 その5人とは、
 あまり賢くないくせに、やたらしつこい性格の「石作皇子(いしづくりのみこ)」
 すぐにいいふりこいて、嘘でも何でも平気な「庫持皇子(くらもちのみこ)」
 単なる金持ち自慢の「右大臣阿倍御主人(うだいじん あべのみうし)」
 武勇が自慢で、実は小心者の「大納言大伴御行(だいなごん おおとものみゆき)」
 優柔不断ですぐ人に頼っちゃう「中納言石上麻呂足(ちゅうなごん いそかみのまろたり)」
 いずれも「女の人との恋の駆け引きでは自信がある」っていうメンバーだったのさ。

<ワンポイント解説>
 いよいよ求婚者が5人に絞られたというところです。当時で言うと「皇子」は天皇の子供、右大臣・大納言・中納言は当時の政治を行っていた天皇の側近の要職についている人で、今で言えば大臣みたいな人と思ってもらうといいでしょう。


 それぞれの性格の部分は、あとあと出てくる内容から、ここで補足してあります。おそらく、当時の男の立場で考えると「そうそう、俺の仕えている貴族ってこういうやつなんだよね~」という「上司にしたくない人、ワースト5」的な人として、また、当時の女の立場で考えると「あ、そうそう、うちの旦那、これよ」というような反応の「貴族の旦那のあるあるネタ」のような感覚で読まれていたのではないかと思います。そして、そういった「気に入らないやつ」をかぐや姫がやっつける、という流れですから、読む人によっては勧善懲悪もののような感覚だったのかも知れませんね。


 また、気になるのが「そんなことまでするの?」の内容。原文には具体的には書いていませんが、個人的には「床下に潜る」とか「屋根に登る」とか、そういう事までしてかぐや姫を覗こうとしたのではないかと思っています。ちなみに、この当時は、家にトイレはなく、赤ちゃん用の「おまる」のようなもので用を足していたので、トイレ覗きはありえませんね。

<参考用原文>
 人の物ともせぬ所に惑ひ歩けれども、何の験あるべくも見えず。家の人どもにものをだに言はむとて、言ひかくれども、事ともせず。
 あたりを離れぬ公達、夜を明かし日を暮らす、多かり。おろかなる人は、
「やうなき歩きはよしなかりけり」
とて、来ずなりにけり。

 その中に、なほ言ひけるは、色好みと言はるる限り五人、思ひやむ時なく夜昼来ける。その名ども、石作の皇子・庫持の皇子・右大臣阿部御主人・大納言大伴御行中納言石上麻呂足、この人々なりけり。