ツンデレかぐやちゃん(竹取物語)

竹取物語を現代風に訳してみました

かぐや姫の成長

 

 さて、この竹取の爺さん、この赤ちゃんを見つけてからは、竹を取りに行くと、毎日毎日、黄金のいっぱい詰まった竹の節を見つけることが続いて、だんだんお金持ちになっていったんだって。

 そして、この爺さんが見つけて来た赤ちゃんも、竹から生まれたせいか、竹のようにアッという間に大きくなって、なんと3ヶ月で13、4才の普通の人間と同じくらいの大きさまで成長しちゃったんだってさ。


 もちろん、この当時の成人っていうと、今とは違っていて、今の中学校1・2年生くらいの年齢だし、それに、誰もが見たことの無いようなすっごい美人だったから、爺さん、婆さんも立派な成人にしようと思って、髪型を大人向きに変えたり、服も大人用に新調して、当時の風習通り、家の奥の部屋をこの子の部屋にして、世話をするお付きの人も雇って、「御簾(みす)」というブラインド・カーテンのようなものをかけて、人から見えないようにしてあげたんだとさ。


 ところが、この子、珍しいことに体から光を放っていて、家の奥の部屋にいるにも関わらず家の中は全部明るく見えるし、爺さんが病気になったり、イヤなことがあって気分が悪くなったときでも、この子をみるとスッカリ元気になったんだって。


 そうやって過ごしているうちに、讃岐造の名前と釣り合うくらいの大金持ちになって、この子も大きく成長したものだから、この子に貴族のようにきちんとした名前をつけてあげようと思って、格式のある神官だった「三室戸齋部の秋田(みむろといわべのあきた)」という人を呼んで名前を付けてもらったんだ。その秋田が付けたのが「なよ竹のかぐや姫」という名前。


 その名前がついたことをお祝いして、爺さんは、自分もお金持ちになったから、当時の貴族やお金持ちの真似をして、3日3晩ぶっ通しで盛大な宴会を開いたんだってさ。そして、将来、かぐや姫のお婿さんになる人が来るかも知れないと思って、ちょうどお婿さんにふさわしいくらいの年齢の男は、誰彼構わず招待して、歌だの踊りだの、とにかく、考えられる宴会行事を全部やったっていう話だよ。


<ワンポイント解説>
 「かぐや姫」の話というと、一般的には「日本の昔話」の1つとして語られる事が多いため、ここに出てくる竹取の爺さんも「正直爺さん」と「意地悪爺さん」の「正直爺さん」っぽいイメージで考えている人が多いのではないかと思うのですが、実際の文章では、昔話ほど「正直爺さん」っぽくないようです。
 どちらかというと、それまではつつましく暮らしていたものの、お金が手に入ると、普通の金持ちと同じように贅沢三昧をしている爺さん、という感じのようで、もしかすると、今で言う「宝くじが当たって贅沢をしている」ような、ちょっとうらやましい存在というイメージで見た方がいいのではないかと思います。要するに、あまり良いイメージでは無いと思った方がいいでしょう。


 また「讃岐造」というと、地方の有力者の名前ですから、こういう地方の人って、ひょっとしたら昔は、ちょっと羽振りが良くなると、すぐに都会の上流貴族の真似をしたがる、なんていう傾向があったのかも知れません。ですから、ここでは、それを皮肉っている面もあるようで、後に、月の都の王からお叱りを受けることになります。


 そして、ここで解釈がいろいろ分かれているのが「かぐや姫自身が光っている」という部分です。実際に光っているというのは現実的ではないとして「光り輝くように美しい、という形容だ」としている人もいるのですが、帝がやってきて、こっそりかぐや姫を見るシーンでも「光っているからかぐや姫だと分かった」という話になるので、ここでは「実際に体から光が出ていた」という説を採用しています。そして、その光は壁を通り抜けてしまう特殊な光で、そのため、家の中全体が明るくなっていたという解釈です。
 個人的には、後になって月の都の人が宙に浮いていたりしていますし、今で言うSF寄りの感覚で、現実ではあり得ない事が起こっていると考えた方が良いのではないかと思っています。
 また、原文では成人の準備をするときに「世話をする人を雇った」という記載はありませんが、後に、世話をする人の話が唐突に出てきますので、ここで雇ったこととして訳してあります。


<参考用原文>
 竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけて後に、竹取るに、節を隔てて、よごとに、黄金ある竹を見つくること重なりぬ。かくて翁やうやう豊かになりゆく。
 この児養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す。帳の内よりも出ださず、いつき養ふ。
 この児のかたちのけうらなること世になく、屋の内は暗き所なく光満ちたり。翁、心地あしく苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ。腹立たしきことも慰みけり。

 翁、竹を取ること久しくなりぬ。勢ひ猛の者になりけり。
 この子いと大きに成りぬれば、名を三室戸斎部の秋田を呼びてつけさす。秋田、なよ竹のかぐや姫と付けつ。このほど三日うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをぞしける。男はうけきらはず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。